更新:$Date:: 2014-04-09 22:16:20 +0900#$, $Rev: 275 $
ロンドン滞在4日めの午後は、いよいよマナー・ハウスでアフタヌーンティーをいただくために出かけることにした。私のイギリス旅行最大の目的は大英博物館だったのだが、こちらのアフタヌーンティーは妻の最大の目的だったため、絶対に外せない旅程である。
と、その前に、まずはマナーハウスとはなんぞやという解説を。
マナー・ハウスという文字面からすると、ロッテンマイヤーさんばりの怖い人が出てきてマナーをしつけられるのでは……という恐ろしい心持ちがするが、もちろんそんなことはない。これは昔の貴族のお屋敷で、現在はリゾート施設や保養所として使われているケースが多いようだ。
今回、我々がアフタヌーンティーを予約したのが、Great Fosters(グレート・フォスターズ)というマナーハウス。Webページを見てみると、Afternoon Teaはメールで予約してね、と書いてある。よし、電話じゃなくてメールならなんとかなるなと思い、旅行前に日本からメールを送っておいた。参考までにこんな感じのを送りました:
Subject: Reservation for afternoon tea Dear Sir or Madam at Great Fosters, I would like to make a reservation for afternoon tea next week. Could you send e-mail to confirm my reservation? Date: June 11 (Tuesday), 2013 (If there are no vacancies on Tuesday, I'd like to make a reservation on Monday 10th or Wednesday 12th instead.) Time: 3:00pm-, (or anytime) Number of people: two Menu: Pimm's Afternoon Tea Name: YAMADA Taro Sincerely, YAMADA Taro
すると無事にReservationの確認メールが来たので、当日はそれを印刷して持って行くことにした。なんとかなりそうだぞ!
目指すGreat Fostersの最寄り駅は、National RailwayのEgham(エッガム)駅。ロンドンからは結構距離のある、郊外の地だ(東京で言うと、新宿から見た青梅あたりのイメージかな)。ロンドンでNational Railwayの鉄道に乗るには、地下鉄のWaterloo(ウォータールー)駅まで行って、Reading駅方面のNational Railwayに乗り換えると良い。なおWaterlooは、ちょっと世界史に詳しい人ならば「ワーテルロー」と発音するでしょうが、イギリスでは「ウォータールー」と発音するので注意が必要。
さてWaterloo駅で地下鉄を降りたが、これがずいぶんと大きな駅で乗り換え口がよく分からない。出発時間も近くて焦りながらしばらくウロウロしていると、実は地下鉄の駅から地上へと出たすぐ目の前に乗り換え口があることが分かった。急いで切符を買おうとするが、今度は自動券売機の操作がよく分からず、普通切符ではなく1等(1st)の切符を買ってしまった……。しかも往復切符。
買い直そうにも時間が無いのと、駅員さんとの交渉がもう面倒なので、1等切符のまま乗ることにした。なお、National Railwayではオイスターカードが使えないと思って券売機で切符を買ったのだが、2014年現在ではオイスターカードが使えるそうなので切符は買わなくていいみたい。
出発間際だったので、ホームでもかなり焦ったが(発着線が非常に多く、たしか20番線くらいまであったかな……)、なんとか目的の列車に乗り込んで出発。とりあえず自由席らしいので、そこら辺の席に座った。あとで知ったが、1等は「1等車」があるわけではなく、先頭列車の座席の一部のみが1stとなっていたらしい。うーん、分からんかった。
やれやれ、これでなんとかEghamまで行けそうだ。ようやく一息ついて列車から窓の外を見ていると、歴史の長そうなレンガ作りの住宅や、馬が走っていそうな牧草地など、興味深い風景が次々と見えてくる。今までずっとロンドンでは地下鉄に乗っていたので、屋外を走る鉄道はワクワクした。
ここでひとつ、ツールの紹介。National RailwayはiPhone用にアプリ(National Rail Enquiries)を出しており、App Storeからダウンロードして無料で利用できる。これがなかなか便利だった。
このように、出発駅と到着駅を指定すればどの列車に乗れば良いかをナビしてくれる。料金も表示されるから分かりやすい。
また電車に乗ったあとも、リアルタイムに今どこにいるかを教えてくれる。これで降りる駅が分からずに乗り過ごしてしまうミスも、大幅に減らすことができるだろう。イギリス旅行者には必須のアプリと言える。できれば日本にいる間にダウンロードしておくと良いでしょう。
さて無事にEgham(エッガム)駅に到着し、電車から降りた。Egham駅の周辺は住宅街だが、お店などは全く無い片田舎の街という感じだ。Great Fostersは、このEgham駅から徒歩20分ほどのところにある。本来ならばクルマで行くのが当たり前の距離なのだろうが、まぁせっかくだし歩いてみたかったので、我々は小雨の中、駅からてくてくと歩いた(^^;)。道は単純なので、迷うことは無い。
駅付近は住宅街となっていたが、ちょっと歩くともう完全に田園地帯となり、家屋はほとんど見られない。
この辺りの人は移動には100%クルマを使うようだ。自動車はビュンビュンと通っていくが、歩いているのは我々だけで、歩行者に会うことはほとんど無かった。しかしせっかくだし、まぁ徒歩もいいだろうとてくてく歩いて、とうとうGreat Fostersに到着!
妻と二人で写真を撮っていると、中から人が出てきて「おまえが予約していたOsumiか。おいで」みたいに言われたので「は、はい。行きます行きます」と館内に入った。
グレートフォスターズの本館(?)は、想像していたよりは小さかったが、狭苦しいということは無いのでゆっくりすることができた。ソファー席に通されて、妻のイギリス旅行の最重要目的、アフタヌーンティーをゆっくりいただく。
アフタヌーンティーにもいくつかのコースがあったが、我々はPIMM'Sというジンベースのフルーツフレーバーリキュールが付いているものをお願いした。ジンの匂いが苦手な人にはちょっとオススメできないが、私はジンは好きなのでこれもなかなか美味しかった。なおこのPIMM'Sは日本ではキリンが販売しているので、比較的入手は容易である。
出てきたお食事も、サンドイッチうまい、スコーンうまい、マカロンうまい、ケーキも甘すぎるけどうまいと、どれもウマかった。ただ私は、何を血迷ったか電車内でカロリーメイトを食べてしまっていたため、あまりの満腹っぷりにちょっと残してしまった。うーん、イギリスは食事がマズいとかさんざん言われてたけど、本当に美味しいものばっかりだよ。ただ、ちょっとお菓子が甘すぎるけど……。
我々がお茶をいただいていると、近所のマダム達という感じの3,4人のおばさま連れが来訪されて、同じくアフタヌーンティーを召し上がっていた。また、老夫婦が"Where is the sun?"と言いながら庭に出て行った(この日は天気が悪く、太陽がまったく見えなかった。まぁ、イギリスは天気の良い日の方がむしろ珍しいのだが)。
なお私が行ったときは、マナーハウスにはスーツにネクタイを締めて行った。イギリスでは結構身なりが大事で、マナーハウスに行くならばTシャツGパンは普通に浮くし絶対に避けた方がいいと思う。せめてきちんとしたシャツにジャケットを着ていった方が良いだろう。
お食事に満足したので、"Check, Please."とお会計をすることにした。こんなに田舎町でクレジットカードは使えるのだろうかと思ったが、ロンドンでよく見るポータブルのカードリーダを持ってきてくれた。というわけで会計したのだが、ここでチップ支払いに大失敗をしてしまった。
この旅行記のチップ(gratuity)のところにも書いたが、イギリスでのチップの支払い方法は難解である。特にここGreat Fostersは、パターン3の「伝票には"gratuity"という空欄が用意されており、自分でそこにチップ額を記入する」だったのだが、私はgratuityの欄があることに気がつかず、そのまま会計をしてしまった。そこで、ウェイター氏らが「な、何かサービスに問題あったか!?」「お気に召さないところがありましたか?」と若干一悶着を起こしてしまった。
アメリカでのチップは小遣い稼ぎという側面が非常に強いのだが、イギリスではそれよりも「サービスへの対価」という側面が強い(と思う。私はそう感じた)。たとえばレストランで給仕があまりによろしくなかったら、料理がどんなに美味でもチップは無し、というのはありだと聞いたことがある。これは逆に言うと、チップをあげないということは、「サービスが悪かった」という意思表示なのだ。
私はそのときチップのことをすっかり失念しており、ウェイター氏らの質問の意図がよく分からずに、"...? Very fine!"とニコニコしながら返事してしまった。彼らはあのとき、自らの給仕サービスへのチップ額に「0ポンド」という値を付けられ、プライドを傷つけられてしまったのだろう。いやはや、今思い返しても悪いことをしたと顔から火が出る。でも言い訳をすると、そんな難しいチップ制度、チップの習慣すら無い国からやってきた観光客がきちんとこなすのはムリだわさ。
結局、彼らは何かあきらめたような顔で会計をしてくれたが、おそらく「このJapanese、チップの仕組みがよく分かっていないのだろう」と思っていたのかしら。なお、このときにチップを払う必要があったんだなということは、帰国後にレシートを整理していてようやく気がついた次第。
このGreat Fostersは、広大な庭園を持っていることで有名である。食事後、"Can I walk around the garden?"と聞いたところ"Sure."ということだったので、妻と二人で庭を散歩して帰ることにした。
結論から言うと、素晴らしいEnglish Gardenだった! イギリス式庭園の細かい定義は専門書に譲るとして、我々一般人は「『不思議の国のアリス』に出てくるような庭」という理解で間違いないだろう。
特に上の写真のように、大人の背よりも高い生け垣に狭い道がまっすぐと続いており、ずっと先を見ると曲がり角が見える……という光景は3Dダンジョンのようだ。あの曲がり角まで行くと、モンスターにエンカウントするかもしれない。このような光景を見ていると、何か見知らぬものが飛び出してくるかも……という、Alice in the wonderland(不思議の国のアリス)の世界が自然と生まれてくるのだなぁと実感できる。
こんなところならウサギもいるかもねーと話していたら、本当にいたのでびっくりした。よく見ると、遠くでぴょんぴょん跳ねている茶色いのが全部ウサギだった。
なお、先ほど「本館(?)」という書き方をしたけど、この通りグレートフォスターズには多くの館が建ち並んでいる。これらは宿泊施設やホールとしても使われているようだ。だだっ広い敷地にあるこれらの館を見ていると、まるで一つの街みたいだなと感じられた。
庭を散歩したあとに元来た道をてくてくと歩いて帰ったが、途中で猛烈にトイレに行きたくなってしまった。アフタヌーンティーで、調子に乗ってガバガバとお茶を飲み過ぎたためだろう。まぁ駅まで行けば……と思いEgham駅につくと、なんと駅にはトイレが無い! National Railwayの郊外の駅では、トイレは無いのが当たり前みたいだ。
うへー、でも長距離列車なら電車の中にあるかも……と思って乗車したところ、乗り込んだ列車内の目の前にトイレがあり、しかもVacancy(空き)だ! ひぃひぃ言いながらトイレに入り、なんとか用を済ませた。よかった、イギリスまで行ってスーツ姿でおもらししたら大変だった(しかも1等切符を持っているのに)。
ちなみに先ほどのアプリで、駅にトイレがあるかどうかも分かる。見ての通り、Egham駅は「× Toilets」である。
そろそろ米のメシが食いたくなったので、晩ご飯は中華料理を食べることにした。ロンドンには中華街もあるのだが、そこまで行く元気は無かったのでホテルのそばにあったHolborn駅の上海ブルース(Shanghai Blues)というお店に行ってみた。
しかしここは、ちょっとイマイチだったなぁ。内装とか雰囲気はオシャレなのだが、頼んだ麻婆豆腐はかなりふ抜けた味だったし、給仕のお姉さんもひどく愛想が悪い。しかも妻と二人でちょっと食べただけなのに43ポンドほどかかり、高さにびっくりして目を回した。うーん、ロンドンは物価が高いなぁ。
また、食事中も(当たり前だけど)すべて英語で注文しないといけないので、滞在4日めにしてそろそろ疲れてきた。イギリスへの留学とか駐在とか、なんとなくイメージでカッコいいと思っていたけど、そういう人たちは本当に大変なんだろうな。「やっぱり、イギリスって英語ばっかりだなぁ……」と当たり前のことを考えながら、かなり疲れた頭で寝た。