ページ作成日:2012/06/11
アルギン酸ナトリウムを塩化カルシウム水溶液に滴下すると、表面がアルギン酸カルシウムで覆われてゲル状になります。これを利用したマイクロカプセルが、人工イクラですね。
材料の塩化カルシウムは押し入れ乾燥剤などに使われており、とても簡単に手に入るため、ちょっと試しに作ってみましょう。
塩化カルシウムは、押し入れ乾燥剤として売っているパックの中身を取り出して使えば良いでしょう。100グラムくらい入ってます。最近は100均などでも売っています。エステー製薬のドライペット、一番小さいやつを買いました。
あるいは塩化カルシウムは安く売っていますから、実験の雰囲気を出したければ買っても良いでしょう。食品グレードのものを買っておけば、作ったあと試しに一口してみるにも安心です。たとえばAmazonでは、塩化カルシウム500グラムで1000円くらいで売っています。
この他、人工イクラを作るには乳酸カルシウムでも構いません。こちらの方を好む人もいるようです。
一方のアルギン酸ナトリウムも、楽天やAmazonで購入できます。500gの試薬がネットで買えますが、そんなにたくさん要らないし5000円くらいと高い。化粧品扱いで10グラムくらいの小売りしているところがあるので、そちらで購入する方が賢明です。私が試したのは自然化粧品研究所というところの商品で、10グラムで300円とお手頃です。
ちなみに10グラムでは少なすぎる場合、50グラムのものも1000円くらいで売ってます。以下の、リッチパウダーという会社のものが人気なようです。
上記の通りアルギン酸ナトリウムは直接ネットで買えますが、ふとしたことから違う手段でも試してみました。
先日、胃カメラを飲んだ際に軽い十二指腸潰瘍と診断されて、カイゲンの「アルロイドG」という薬が処方されました。これが実はただのアルギン酸ナトリウム水溶液なので、飲み残しを利用しました。アルロイドGは5%水溶液なので、これに同量の水を加えて半分の2.5%水溶液としました。
↑塩化カルシウム水溶液(左)と、アルロイドG(右)。アルロイドGは何故か緑色に着色されている。
の2つを作ります。具体的には、「2グラムのアルギン酸ナトリウムと、水100ミリリットル(本当は98ミリリットルだけど、まぁ大丈夫)」、「20グラムの塩化カルシウムと、水180ミリリットル」の分量となります。この実験はアバウトなので、多少濃度を間違えても大丈夫です。このくらいなら、キッチンの道具だけでできますね。
まずアルギン酸ナトリウムを水に溶かしますが、これが非常に難しい。あっという間にダマだらけになってしまいます。ダマになってしまった場合、いったんよく混ぜたあとに一日置いて、水が十分なじんだところで再撹拌して混ぜると良いです。あるいは、フタ付きのガラスびんなどで混ぜ、フタを締めてビンごと振るとよく混ざります。子どもの前で実演するときは、料理番組のように「ここに一日おいたものがあります……」と用意しておいた方が良いでしょう。できあがったら食紅を耳かき一杯投入してよく混ぜると、イクラっぽい色になります。
続いて塩化カルシウム溶液を作成する……と言っても、押し入れ乾燥剤を水で溶かすだけ。溶けやすいので、あっという間にできます。なお溶かす際、発熱反応のため温かくなることも観察しましょう(小ネタ)。混ぜている容器の外側を触ると、じんわりと温かさが感じられます。
スポイトで赤いアルギン酸ナトリウム水溶液を取り、塩化カルシウム水溶液に滴下します。高いところから落とす・低いところから落とすなど変えてみて、どのようにイクラの状態が変わるか観察してみましょう。
また、雫として落とさずに「ぎゅっ」と出すと、カエルの卵みたいな細長い紐状のものも作成できます。
たくさんできたら、網(私は紅茶濾しを使用)でより分けて、よく水洗いして完成。食紅で色を付けただけなのに、結構それっぽく見えますね。
なお、この分量では殻が強くて中まで固すぎたため、水溶液に落としたらすぐにすくい取る・CaCl2の濃度をもうちょっと低くする、というのが必要かもしれません。
アルギン酸ナトリウムは普通に食べることができますし、特に人体に害はありません。ただし流しにそのまま捨てると配水管が詰まる恐れがあるので、塩化カルシウム水溶液に入れて固めてから、燃えるゴミとして捨てると良いでしょう。
塩化カルシウム水溶液も、人体に害はありません(雪の日、道路でたくさんまいている白い粉が塩化カルシウムです)。高濃度のもので無ければそのまま流してしまって大丈夫でしょう。ただし、錆と腐食防止のため、流した後に水をたくさん流しておきましょう。手荒れを防ぐため、最後に手もよく洗おう。