博物館が大好きで、学芸員の資格も持っている私としては、大英博物館(The British Museum)を訪問することは長年の夢だった。今回、新婚旅行でイギリスに行くことに決めた主な理由も、大英博物館に行きたかったから……と言っても過言ではない。
本当は1日と言わず2日も3日も行きたかったのだが、さすがにそれもどうかと思いイギリス滞在3日めの1日間だけをあてることにした。なお、パック旅行などでは博物館に2時間くらいしか滞在しない行程が多いのだけど、それだけでは全くといって良いほど時間が足りないので、フリー旅程でゆっくりと丸一日かけて鑑賞することを激しくオススメします。
大英博物館は、地下鉄Holborn駅から歩いて5分ほど。我々の宿の最寄り駅はHolborn駅だったので、ホテルから直接歩いて行くことにした。
博物館の前は商店街になっており、土産物屋もある。そこにあったのが、この「It's All Greek」というお店。
これはかなりウケた。英語のイディオムで「It's all Greek to me.」というのは、「ちんぷんかんぷんだよ!」という意味。この"Greek"とはギリシャ語のことで、難しいギリシャ語イコールちんぷんかんぷん、と意味しているわけですな。
しかしここは大英博物館の目の前ということで、このイディオムと、ギリシャのお土産を色々売っているよ、というのをかけているのだろう。なんともユーモラスな看板だった。
というわけで、鼻息荒く大英博物館の敷地内に入る。
やはり世界的な観光名所ということで、入り口付近も観光客でいっぱいだ。みんなここで写真を撮っていたので私も撮影した。では早速中に入ってチケットを……と思うのだが、この辺りについて少し解説する。
結構有名な話なのだが、大英博物館の入館料は太っ腹なことに無料である。そのためチケットを購入する必要は無い。ただし、入り口には大きな募金箱があり、5ポンドほどの寄付を呼びかけている。
また、館内地図と、音声ガイドのレンタルは有料である。地図は2ポンドするけど、無いと迷うし入館料代わりに買うべきだろう。また音声ガイドは日本語音声のものが用意されており、これはとっても便利で役に立つので絶対に借りた方が良い。というわけで音声ガイド+地図で合わせて7ポンドかかるけど、これだけ大きな博物館なんだし、まぁこんなもんでしょう。
これら地図と音声ガイドは、入館してすぐの広場"Great Court"の左手、インフォメーションカウンターで利用することができる(British Museum - Ground floor)。
音声ガイドを欲しいと言うと、はじめに言語を聞かれるので[Japanese]と答えれば良い。なお、借りる際にはデポジットのために以下のどれかをカウンターに預けないといけない。
私はパスポートのコピーを持って行ったのだが、原本でないとダメだと言われてしまった。うーん、音声ガイドごときにパスポートの原本を預けるのはイヤすぎる……ということで、クレジットカードを預けることにした。最悪、何か悪さをされてもショッピング枠の被害しか無いわけだから。それよりも、パスポートを渡して紛失されちゃう方が大問題だもんね。
たとえ金銭被害の心配があったとしても、やはりパスポートを預けるのはリスクが高すぎるので、皆さんもクレジットカードを預けた方が良いと思う。
クレジットカードを預けると、首からかけられる音声ガイドを貸してもらえる。館内にはこの音声ガイドが付いている展示物はとても多く、また順路も示してくれるためすこぶる便利である。ガイド文とその朗読も日本語のプロの翻訳家がやっているようで、ありがちな「おかしな日本語」はまったく無かった。繰り返しになるけど、大英博物館ではこの日本語音声ガイドを絶対に借りた方が良い。
この大英博物館でもっとも有名な展示物、ロゼッタストーン。Ground floorの左手入り口から、Ancient Egyptゾーンへ入ったところにある。
他の展示物はカバーも何もなしに無造作に置かれているものが多いんだけど、さすがにこのロゼッタストーンは厚いガラスケースに入れられていて、触れることができないようになっていた。大英博物館でいちばんの見所ということもあり、混雑も結構すごい。とは言っても、押すな押すなというレベルではないので比較的じっくり見ることができた。
はるか昔、紀元前のエジプトで作られてから、はるばるとここまでやってきたんだなァ……としばし感慨にふけった。
大英博物館は、とにかく広い。じっくり見て回ると、とても一日で全てを見ることはムリだろう。だから、はじめから「全部を見るのはムリ」とあきらめてしまって、なるたけひとつひとつの展示に時間をかけるのが良いと思う。
特に古代ギリシャ、エジプト、メソポタミアの展示物は量・質ともに圧巻である。あんなに巨大な楔形文字の板を、しかもあれだけ大量に展示しているのにはびっくりした。
これは、シュメール文明の遺跡から見つかる"Eye Idol"、日本語では「目の偶像」と呼ばれるもの。上野の国立博物館も所蔵しており、そこで初めて見たときに、その不思議な魅力に虜となった。
が、なんと大英博物館には、この「目の偶像」がぞろぞろと大量に展示されている。上野で1つだけぽつんと展示されているのを眺めることに慣れていたため、ここまで多いと、逆にありがたみが感じられなかった(^^;)。
次の写真は、ギリシャ・ローマの遺跡から発掘された数々の出土品。このような大規模展示がいくつもの展示室でおこなわれている。
階段の途中に、所狭しとかけられているモザイク画も良かった。こんな素晴らしいもの、日本で展示したら1枚だけでも展覧会の目玉になるだろうなぁ。
なお写真を撮っていないのだが、世界中の品を集めているため、当然のことながら日本のコーナーもある(三菱商事がスポンサーになっているようだ)。日本の展示はなかなか小気味よくすっきりまとめられていて、日本人が見ても楽しめた。私が行ったときには写真家の特集がされており、細江英公・篠山紀信・奈良原一高の作品が展示されていた。まさかイギリスの大英博物館まで行って、細江英公の「薔薇刑」を見るとは思わなかったのでびっくり。
大英博物館のミュージアムショップは、Great Court真ん中の丸い建物がそれである。
特にロゼッタストーングッズはすさまじく、ロゼッタストーンキーホルダー、ロゼッタストーンマグカップ、ロゼッタストーンTシャツ、ロゼッタストーンバッグ、ロゼッタストーンカード入れ……と節操ない感じで色々ある。この辺の商魂たくましさは、日本の土産物事情とだいたい同じ感じだね。
結局私が買ったものは、会社の先輩(学生時代は史学専攻)にロゼッタストーンタンブラー、友人にエジプトミイラのUSBメモリだけだった。
イギリスでは身なりで激しく差別されると聞いていたので、Tシャツなどは持っていかず、全滞在期間を襟付きシャツ+ジャケット着用で過ごした。スーツも持って行ったので、これをいったん洗って欲しいなーと思い、大英博物館に行った日の夜にホテルのランドリーサービスを利用した。
かなり緊張しながらフロントに電話し、Laundry Serviceが使いたい、Could you pick up my cloths? と頼むと、「オーケーオーケー、今から行くからそのまま部屋で待ってろ」と言われた(と思う)。通じたのかなぁと不安に思っていたが、5分もすると服を取りに来てくれたのでスーツを渡した。料金表を見せてくれたのだが、細かな洗い方で差があるのか、なんだか違う料金2つがあってどっちを選ぶ? みたいに聞かれる。困っていると、「オーケーオーケー、Trust me」と勝手にメニューを選んでくれた。こっちもよく分からんので、それでOKということにした。
翌日、ちゃんとクリーニングされたスーツが部屋に届いていたので、よく分からんが通じたようだ。クリーニングは丁寧にされていたので、よく分からんが満足した。
イギリスに行って思ったのは、生活の色んな場所での細かな会話、こういうのが英語として一番難しいんだなぁということ。難しい文法や長い英単語より、「スーツをクリーニングに出したいんだけど。何日かかる? お急ぎ便ある?」とか、そういう何気ない生活会話が一番難しい。そういう意味では、TOEICは何かと非難されるけど、チラシの読解とかそれなりに一つの英語力にはなると思う。